衝撃的な世界観に引き込まれる文学作品2つ

京都の街に行けば、着物を着た観光客たちが人力車に乗っている光景がすぐ目に入るでしょう。間違いなく、日本は海外から高く評価されている文化大国であり、世界各地から多くの外国人観光客が訪れています。

そして、日本が世界に誇る文化的魅力が多数ある中で、もうひとつの自賛すべきカルチャーは、ずばり「文学」でしょう。

『ペンギン版英訳日本短編小説集(The Penguin Book of Japanese Short Stories)』には、村上春樹、川端康成、吉本ばなななどの著名作家による作品が多数登場します。同小説集の風変わりな序文において、「この短編小説集は日本文学の入門書となるだろう。」と村上春樹は述べています。

それぞれの作家は、生きた時代や場所は異なっていますが、彼らの目線は俳人のように低く、小さく、それでいて普遍的な真理を捉えています。この「普遍的な真理」の中には、神道における幽霊や伝説の物語に加えて、禅のニュアンスが頻繁に織り込まれています。

同短編小説集は、明治維新から2011年の東日本大震災まで、主に年代順に並べられていますが、内容は「自然と記憶」「男と女」「恐怖」などのテーマに基づいた構成となっています。

作家たちが「なぜ」と思案することはほとんどなく、また破壊的な能力に驚かされることもないです。

その代わりに、例えば、野坂昭如は短編小説『アメリカひじき』で、年老いたアメリカ人の退役軍人を性的に支配することで敗北感を味わう男を通して、戦後の心情を粗雑かつ率直に描いています。

また、佐伯一麦は、『日和山』の丘の上から、地震による津波で流された建造物を眺めながら、本当に戦うべき相手を描いています。

三島由紀夫『豊饒の海』シリーズ

三島由紀夫は一風変わっていると言われていますが、その才能は紛れもないものです。

三島由紀夫は1925年生まれで、伝統的な情緒と西洋的な言語を組み合わせた手法で執筆しました。1956年の『金閣寺』で特に知られています。同作品は、強迫観念にとらわれた主人公が、自分の狂気の対象に火をつけるという内容です。ちなみに、京都の金閣寺は、現在では世界で最も観光客が多い場所の一つとなっています。

三島の作品は、暗く歪んだ題材を徹底的に考察するという点で、ドストエフスキーに通じるものがあります。最後の四部作である『豊饒の海』は、1900年代初頭の変革期を描いており、この作品はトルストイの『戦争と平和』がそうであるように、日本文学史における重要な作品となっています。

『春の雪』『奔馬』『暁の寺』『天人五衰』の4作品は、常識的なことと馬鹿げたことを巧みに調和させた作品です。これら4作品の舞台は、1912年(日露戦争直後)から戦後の1975年まで。

物語においては、西洋的なアイデアと、それが日本経済や文化に与えた影響が、多くの人々の背景や動機となっています。第1巻では、不幸な星のもとに生まれた恋人たち、第2巻では、再生と仏教の信仰が描かれています。

さらに第3巻では、主人公のモラルが劇的に低下し、主人公は人生の「観察者」であるべきだという考えに固執して、文字通りの観察者、すなわち「覗き魔」へと変貌します。しかし、読者は、ここまで落ちぶれた主人公が、最後の第4巻では更生するのではないかと期待します。三島由紀夫の才能が、意外なところで発揮されている作品となっているので、ぜひ一度読んでみてくださいね。