現代小説おすすめ人気ベスト4作品

日本文学作品の英訳がされるがままに、作家・村上春樹ばかりが注目を集め、結果として、日本文学=村上春樹、として全体像が語られてしまうことがあります。

村上春樹の小説は、全世界で数千万部の売り上げを記録し、2014年に『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』がアメリカで発売された際には、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーリストで2週間にわたってトップを飾りました。

でも実際には、村上春樹だけでなく、作品が巧みに英訳され、海外の人々に楽しまれている日本人作家はもっとたくさんいます。

深い哲学的な内省と絡み合った、ささやかな日常への関心、性的欲望の激しい探求、冷静でコントロールされた言語の使用など、読者が好む村上の文章の要素は、村上と同世代の作家の作品にも見られますが、「日本文学」とは決して1つのジャンルを意味するものではありません。

現代小説には、様々なヴォイスが存在するので、読者は好みの作品を見つけることができるはずです。

ではここで、日本人作家による現代小説のおすすめベスト4を見ていきましょう。

村上春樹『ノルウェイの森』

村上春樹の爆発的な人気には、それなりの理由があります。

『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』などの同氏による作品は、マジックリアリズムへと陥っていきますが、1987年に発表された初の大ヒット作『ノルウェイの森』は、現実に根ざした作品となっています。

『ノルウェイの森』では、一人の青年の自殺と、その青年の友人であり主人公でもあるワタナベトオルと彼の恋人の直子という、青年と最も親しかった人たちの結末が描かれています。1960年代の東京を舞台に、精神疾患、性欲、孤独、疎外感などのテーマを扱っています。

川上未映子『乳と卵』

『乳と卵』は2010年に国内で大ヒットした作品で、川上未映子の小説としては、2020年に初めて英語に翻訳されて発売された作品です。

第1章(2008年に小説として発表)では、ヒロイン・夏子の姉と姪がお金を出し合って東京に遊びに来た週末が舞台となっています。大阪でホステスをしている40代の姉は、豊胸手術のことで頭がいっぱいで、姉の12歳になる娘は、半年間も口をきいていない…という設定。

小説の後半では、かなり長い時間が描かれていて、夏子が執筆活動の停滞や社会的な不安などに悩む姿が描かれています。

川上弘美『古道具 中野商店』

川上弘美の『古道具 中野商店』は、『乳と卵』と同様に、本好きの女性ヒロインが抱える、現代の東京で生きることへの希望や恐れ、視点が描かれている作品。

本作の主人公であるヒトミは、古書も販売している古道具屋で働き、タケオという配達員との関係を深めていきます。

孤独とは何か、他者とのつながりを築くにはどうすればよいかを探っていきますが、ときにはそれが、穏やかな様子とは裏腹に、さらなるじれったさを抱かせます。

大江健三郎『個人的な体験』

大江健三郎は、1994年にノーベル文学賞を受賞した現代文学の文豪ともいえる存在。受賞の30年前、1964年に発表されたのが『個人的な体験』です。

本作は、知的障害を持つ子供が生まれたことに悩む若い教師の姿を描いた、荒涼とした暴力的な半自伝的小説です。

屈辱、軽蔑、自己陶酔、自己破壊などの感情、そして順応、酩酊、ニヒリズムといったテーマを巡る物語となっており、一度読んだら決して忘れることができない衝撃的な作品。